理事長挨拶

m-yukio三宅幸夫 (理事長)

 新しい年を迎え、会員のみなさま、また日頃から日本ワーグナー協会の活動を見守ってくださっている方々にとって、今年も佳い年となりますよう心からお祈り申し上げます。
さて当協会は1980年に設立されましたから、この4月には37回目の新しい年度に入ることになります。設立当初、ワーグナーといえば、もっぱら二期会頼みという状況でしたが、1987年にベルリン・ドイツオペラが引っ越し公演で《ニーベルングの指環》4作を一挙上演して以来、ワーグナーに対する社会的関心が深まりを見せてきたように思います。1990年、日生劇場と提携した当協会による《トリスタンとイゾルデ》(邦人初演をふくむ)はその延長線上にあり、日本のワーグナー上演史に貴重な一歩を記しました。もちろん経済的にはバブルの恩恵に浴したとみることもできますが、それにしても隔世の感ありといったところでしょうか。
そして今年は、びわ湖ホールから発信される《さまよえるオランダ人》をはじめとして、二期会による《トリスタンとイゾルデ》、新国立劇場として3回目のサイクルに入った《ヴァルキューレ》が予定されています。さらに来年度には、別の《指環》プロダクションがスタートすると漏れ聞いていますから、そうなると、ふたつの《指環》が同時並行するわけで、ワーグナー上演が珍しい、なにか特別なことであった協会の設立当初を振り返ると、まさに隔世の感がいや増すというものです。
このように、日本におけるワーグナー受容は加速度的に変化しているように思われます。
もちろん、これまでのように例会、年刊、季報などの場で、台本と音楽を地道に読み解き、公演に向けて作品理解を高めてゆく努力も継続してゆかねばなりません。まさにこれまでの対訳本もふくめた蓄積が、日本における現在のワーグナー理解を支えているといっても過言ではないからです。しかし一方で、アマチュア・オーケストラと提携した「ワーグナー生誕200年記念演奏会」のように、まさにワーグナー協会にしかできない新しい試みを導入してゆく必要もあるのではないでしょうか。
今年の理事・評議員会では新たな体制のもとで、新たな方向性が打ち出されると信じております。みなさまにおかれましては、いっそうの協会に対する支援を心からお願いするしだいであります。